判例紹介
平成21年3月10日判決駐車場を不法占有している所有権留保付自動車につき信販会社に撤去を求められるか
- 概要
【裁判所】最高裁判所第三小法廷
駐車場契約をしている賃借人が長期にわたって家賃を滞納しているため,賃貸人が契約を解除したが,自動車は駐車場に放置されたままであった。もっとも,この自動車には,いわゆるオートローン契約に基づき信販会社の所有権留保が付されていた。
この場合,駐車場の賃貸人は,信販会社に対して当該車両の撤去を求めることができるか。- 問題の所在
- 賃貸人としては,賃借人が行方不明になった場合などには,信販会社に対して自動車の引揚げを求めたいが,信販会社としては,自動車に換価価値がない場合,引揚げに消極的にならざるを得ない。
この点,所有権留保の性質のうち「担保」性を強調すると,撤去を求められるのはあくまで自動車の使用者である賃借人のみとなるが,「所有権」が信販会社にあるという点を強調すれば,信販会社に撤去義務があることになる。 - 判旨と解説
判決は,オートローン契約などの契約について期限の利益喪失により残債務の弁済期が到来するまでは,撤去義務や賃料相当損害金の支払義務を負うことはないが,残債務の弁済期が到来した後は,当該動産(自動車)を占有・処分する権限を取得するのであるから,撤去義務や賃料相当損害金の支払義務を免れることはできないとした。
もっとも,賃料相当損害金については,残債務の弁済期が到来したとしても,当該動産(自動車)が第三者の土地を占拠している事実を知らなければ不法行為責任を問われるいわれはないから,不法占拠の事実を告げられるなどしてこれを知ったときから賃料相当損害金が発生するとした。
本件は,自動車のみならず所有権留保付動産が第三者所有の土地に存在する場合の一般論について判断したものであるが,とりわけ駐車場の賃貸人としては,賃借人である自動車の所有者と連絡が取れないまま自動車が長期間放置された場合には,信販会社に対して撤去を求められる場合が認められたという点で大きな意義があると言える。